〒590-0063 大阪府堺市堺区中安井町3丁4-10 堺東八千代ビル7階E号室
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ここでは、司法書士の業務を備忘録として記録しています。情報を活用されるのはご自由ですが、責任は持てませんので悪しからずご了承ください。登記申請は大阪法務局管轄全般ですが、相続などは堺支局が多いです。(平日夕方17時頃でしたら同業者の方からでも、ご質問等あればお答え出来ます。)
司法書士が成年後見人に就任して、不動産売却をする際、売主として登記申請書に押印する実印ですが、司法書士の個人の実印+個人の印鑑証明書でも、家庭裁判所で登録した印鑑に家庭裁判所で発行された印鑑登録証明書でも問題はない。ただし、成年後見登記簿謄本に記録されている後見人の住所が個人住所であれば、個人の実印で差支えないが、便宜上、就任時に後見人の司法書士事務所の所在地を届出して記載しているのであれば、家庭裁判所で後見人の実印を登録するか、所属司法書士会発行が発行している住所と事務所所在地の沿革のつく証明書を別途添付する必要がある。
なお、成年後見人の地位に基づいて、不動産売却の登記申請をする場合、居住用不動産であれば、家庭裁判所の許可が必要になり、権利証の添付が不要だが、居住用ではない場合、仮に権利証が無い場合は、売主の法定代理人たる地位に基づいて申請となるので、資格者代理人による本人確認書類の作成ができず、事前通知の方法によるか、別途、登記申請の司法書士を手配する必要がある。
成年後見人として登記申請する場合、電子署名が出来ないので従来通り紙申請となるのだが、司法書士たる代理人申請ではないので、書類の受取り先は後見登記簿記載の後見人の住所地になるので注意が必要である。売却の前提として相続登記がある場合、登記識別情報の郵送返却は、個人の登記申請となるので、本人限定受取り郵便の方法となる。
所有権移転と道路部分である持分について、登記申請を連件申請で分けた場合でも登記原因証明情報を1枚の用紙で作成する場合があります。その際、同じ登記原因証明情報になるので、後件の登記原因証明情報については、前件添付とし、登記原因証明情報は添付しません(不動産登記規則第37条参照)。しかし、オンライン申請の場合、後件について登記原因証明情報のPDFを送信するか否かという問題がでてきます。オンライン申請における登記原因証明情報のPDF送信でも不動産登記規則第37条が適用されるのか否かちょっと迷います。前件に登記原因証明情報のPDFがあるので後件ではPDF不要という意見もありますが、私は、オンライン申請のPDF送信の原則通り、前件と同じ登記原因証明情報のPDFを添付して申請しましたが、補正無く完了となりました。オンライン申請の登記原因証明情報のPDF添付省略については、不動産登記規則附則第22条第2項に記載されているとおり、不動産登記法64条の登記、および、平成20年3月19日法務省民二第950号通知にある(根)抵当権の債務者の氏名住所変更登記において、市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報を登記原因を証する情報とする場合のみである。
お恥ずかしい話で、少し慌てて登記申請をしたということもあり、取引以外ですが、登記申請を取下げたことがあります。普段から登記申請の取下げに慣れている司法書士は居ないと思いますが、私も不慣れです。取下げは申請用総合ソフトで簡単にできるのですが、その後の手配が慣れていません。一度収めた登録免許税の還付をしなければなりません。再使用証明書の方が手配が簡単なのかもしれませんが、印紙の内訳を記載しなければならず、貼付した印紙を覚えていないので(法務局も遠方で確認に行けない)、この時は、現金還付の方法をとりました。無事、還付の申出したつもりが、また、法務局から連絡が。登記申請に使用した申請印ではなく、司法書士の職印で押印をお願いしたいとの事。これについて、後日、調べたところ、司法書士が職務として法務局に提出する書類には、司法書士の職印を押さなければならないという規定があるようで(司法書士法施行規則第28条)、勤務時代、印紙貼付の台紙に職印が押されてたやつです。なるほど、あの押印には意味があったのかと感心した次第です。あまりない事ですが、今後は、申請印と職印の両方を押すという事にしました(職印を求めない法務局もあるため)。
相続登記未了の不動産があり、相続財産管理人と他の相続人との間で遺産分割協議が成立した後、相続財産管理人の単独名義となるので、相続財産法人名義へ直接名義変更をすることの可否を確認したところ、不可であるとの事。相続財産法人への変更は、所有権登記名義人氏名変更登記に該当するので、ダイレクトに相続登記が可能かの疑問がわいたが、あくまでも便宜上の表示変更登記らしく、原則通り相続登記→所有権登記名義人氏名変更の順序で登記が必要。なお、家庭裁判所で選任された相続財産管理人の選任審判書があればそれを登記原因証明情報として、相続人が居ないことの証明は不要で所有権登記名義人氏名変更登記は可能。今回は、相続財産管理人を遺産分割協議により単独名義にして、不動産を売却したが、この遺産分割協議をすることについて、権限外行為となるので、売却の許可は勿論必要であるが、本件については、便宜、相続財産管理人の単独名義にしているので、遺産分割協議自体の家庭裁判所の許可も必要となる。
韓国籍の方が日本で生活をし、不動産を所有しているケースは良くあります。被相続人が韓国籍または帰化して日本国籍を取得したとしても、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要なのは同じで、帰化しているのであれば、帰化前の戸籍を韓国領事館で取得し、日本国籍取得後は日本の戸籍を取得します。もちろん、韓国戸籍はハングル文字で記録されているので訳文も添付することになりますが、この戸籍の原本還付が問題となりました。日本の戸籍謄本については相続関係説明図を添付することにより、戸籍のコピーを添付せずに還付が可能であるが、韓国戸籍(外国の戸籍)については、訳文も含めて写しを添付しなければ、原本還付請求が出来ないとの事。取り扱いが異なる理由が今一つ理解が出来ないのであるが、恐らく、相続関係図だけを法務局提出になると訳文が無いため、利害関係人からの閲覧で問題が出てくるのではないかと考えています。もし、相続関係図だけを添付してしまうと、最悪、取得した韓国戸籍の原本を法務局へ提出することとなるので、注意しなければいけません。(登研778号参照)
被相続人Aが亡くなり、その相続について承認・放棄をしない間に相続人Bがさらに死亡し、相続が発生することを再転相続といいます。この時、Bの相続人であるCは、Aの相続のみ相続放棄をし、Bの相続について承認をするという方法が取れます。この相続放棄の方法をとることにより、たとえばAの借金の相続放棄はするが、Bの相続については、相続財産を取得することが出来ますのでメリットがあります。AとBの両者に借金があれば、双方の相続放棄も可能ではあるが、単にBのみの相続放棄をすればよく、同じ結果が得られます。なお、Aの相続を承認し、Bの相続を相続放棄することは認められていないのは民法の条文通り。また、再転相続のさらに再転はあり得る話ではあるものの、承認や相続放棄ができる民法上の規定がないので、家庭裁判所に否定される可能性が高いと感じています。
堺市では、道路に供している土地であっても不動産評価額が出ているものがあるのですが、そもそも、道路に提供している土地については、固定資産税が非課税となっており、不動産評価も無いものがほとんどです。不動産評価が無いものについては、いつも通り、近傍宅地評価をとり、それが公衆用道路であれば30/100を掛けたものを不動産評価として登録免許税の計算をするのですが、この評価が出ている道路部分については曲者で、いつも通り登録免許税を計算して登記申請をすると、補正対象になります。法務局曰く、堺市周辺で評価の出ている道路部分の土地があって、周辺の土地と平米単価が低いものがあれば、それを登録免許税の課税価格として利用することはできず、その評価に3倍したものを評価額としてくださいと連絡があります。低く評価され過ぎているとの理由ですが、ローカルルール過ぎて分かりませんと伝えたところ、登録免許税は不安があれば事前に打ち合わせしてもらえれば良いのでと言われたので、他の登記相談とは別扱いでウェルカムな感じです。
共同根抵当権が既に設定されている状態で、他の管轄に属する不動産を購入した場合の登記申請の順番だが、金融機関が事前に極度額増額の稟議を出してくれれば、先に既存の共同根抵当権について極度額増額登記を申請するが、銀行は過剰な極度額設定をすることを嫌がるので、その方法がとれない。よって、今回取引により取得した物件につていて、共同根抵当権設定(追加)の申請をし、連件で極度額増額登記を申請することになる。完了後に他管轄の既存根抵当権の極度額増額登記申請をして完了。このとき、根抵当権極度額増額変更契約書に記載する根抵当権の特定方法について、増額契約時にはこの根抵当権は登記がされておらず、受付番号が空欄ではあるが、紙申請で申請(現在であれば登記順位に関する重要な部分ではないのでオンライン申請も可能であると考えます)をしたうえ、受付で補記することで問題なく完了となる。法務局と事前に打ち合わせもしたが、その方法以外に方法が無いので大丈夫ですと回答を得た。
根抵当権は事業用として登記されることが一般的だが、個人の債務者が登記されている場合がある。根抵当権の債務者について相続が開始し、死亡後6カ月以内に指定債務者の合意の登記を申請しない場合には、その根抵当権によって担保されている債務は元本確定することになるので、甲区について相続登記を申請した後、金融機関に相続登記完了後の登記情報を提出し、①債務者の法定相続登記、②指定債務者の指定、および、③債務者の交換的変更+免責的債務引受けによる債権の範囲の変更契約をし、①~③の登記を連件で申請することになる(なお、根抵当権では事業を承継する相続人の一人を債務者の相続人としてダイレクトに登記することは不可)。そこで、今回、管轄が2つにまたがっており、この①②③の連件申請を、各法務局へそれぞれ一度に登記申請することが可能かどうかが気になった。③の登記は元本が確定する前に限って登記申請をすることが可能であるところ、A管轄では①債務者の法定相続登記と②指定債務者の合意が登記されるが、B管轄では②の指定債務者の合意の登記が同時に出来ないので、後日申請することになるのである。このような状況で、A管轄において①②の続きで③の登記も連件申請をしても良いものかどうか。答えは、A管轄で①②③の連件申請をし、B管轄で①②③の連件申請が可能であるとの事。
実務でも不動産登記の受験問題でも、根抵当権が元本確定後に一部移転がされており、準共有状態の根抵当権の全部抹消登記については良く目にするのですが、今回は住宅ローンの抵当権について返済が滞り、保険一部代位によりプロパーで設定された抵当権の一部を、住宅金融支援機構が弁済したという一部移転登記がされていた抵当権の全部抹消をするというお話でした。元本確定後の根抵当権と抵当権は同じであるとの認識であるが、書籍を調べてもズバリの記載が無かったので、調べたところ登記研究785号の質疑応答109に答えがあったので、無事登記申請を終えました。
登記原因が同一である場合、AおよびB債権者が各々作成した登記原因証明情報を添付し、主登記と付記登記を一括で抹消登記が可能である。添付する登記識別情報はそれぞれ権利を取得時のもので、AとBの登記原因証明情報に記載されている抹消すべき登記は、それぞれ取得した日付受付番号(Aは設定日、Bは一部移転日)を記載して問題がない。申請書に記載する抹消すべき登記は主登記のものを記載。心配になるのは、住宅金融支援機構は、通常抵当権抹消登記をする場合、弁済を原因とするところなのだが、担当者も他の債権者と登記原因を合わせますと理解があったので、事なきを得た。この一部移転登記がされている場合、債権が完済される可能性が低いと考えられるので、解除になるかと推測されるが、打合せで、完済となるのか否か、登記原因は同一になるかの確認は必要である。
この抵当権一部移転登記を、仮に2件分としてそれぞれ抹消することになると、先に原抵当権の抹消登記を申請する場合、ABの債権者の全員が登記義務者として申請することとなり(抵当権変更登記で債権額の変更があるため)、B(一部移転の債権者)の委任状をもらえない可能性が高いので(逆に一部移転登記を抹消する場合もABが義務者となるという見解もある)、登記原因の同一か否かの確認は重要となる。
破産管財人の売却案件について、まれに管財人に就任時に発行した日付の古い印鑑証明書と資格証明書が登記で使えるかどうかの確認をされるが、登記上、裁判所書記官が発行する印鑑証明書については、作成後3カ月以内の期限が設けられていないので、利用できそうであるが、破産管財人の印鑑証明書と資格証明書は、両者を兼用した書式で裁判所が発行するもので、印鑑証明書としては使用できるが、資格証明書としては有効期限が3カ月以内であるため、答えとしては使用不可という事になる。有効期限が切れていても、管財人に再発行をお願いすると1日~2日くらいで、発行してもらえるので、決済前に確認できれば間に合うことが多い。
なお、管財案件で良くあるのが、売却許可決定が出てから許可証明書を確認していると、義務者(破産者)の表示は間違いがないのだが、買主の表示間違いが多くあり、この場合も、許可後の変更決定を出してもらい(1日~2日くらい)、その後、許可証明書の再発行をお願いすると、訂正後の表示で証明書が発行されるので、安心して決済日を迎えることが出来る。ただし、これは破産管財人の就任している案件による対応になり、同じような相続財産管理人等が就任している際に発行される売却許可については、審判になるため、変更が出来ずに(審判は出ると同時に確定する)、再度、審判申立となるため、すこし時間がかかった。
お恥ずかしいお話です。オンライン申請で不動産登記申請をした場合の取下げについて、管轄違いなどの却下事由がある場合には、法務局へ連絡し却下をしてもらう事になるのだが、登記の順番を間違えた等、例えば、1件目に住所変更登記、2件目に所有権移転登記を申請する予定であったが、2件目の所有権移転登記だけを申請した場合は、登記名義人の住所が印鑑証明書の住所と異なるため補正事由となる。このような場合、申請人から登記申請を取下げる必要があるが、まず、法務局へ連絡し、登記申請が間違えた旨を伝えたうえ取下げを申請総合ソフトで行い、到達後に法務局へ連絡。暫くすると取下げ処理がされて手続き終了となり、改めて予定していた登記申請をすることになった。予定していた登記申請の添付書類とは別で、取下げの申請書+取下げのための委任状を合綴して(今回、所有権移転登記で使用するための登記原因援用型の委任状ではあったが、登記原因証明情報の写し(差入れ形式ですので還付が出来ないため写しを添付)と委任状の写し+原本還付(原本は別件添付)で)送付をして無事完了となる。なお、取下げ事由は、「補正のための取下げ」で、申請人は、委任を頂いている権利者と義務者からとなる。本来、法務局へ取下げの委任状が届かないと、間違えた登記申請を取下げ完了とはならないはずではあるが、即時取下げ完了となった(司法書士からの自己申告であったため間違いないとの判断をされたのか)。取下げ自体が殆どないうえ、それをオンライン申請によるものである場合は、オンラインでどの様にしてよいか分からず法務局へ確認するのが確実であるが、オンライン申請のパソコンの操作は注意しなければならないと改めて実感した。
住宅ローンを組みますと抵当権を設定するが、ほとんどが保証会社からの将来発生する求償債権を担保しますが、金融機関から抵当権設定契約証書とは別に登記原因証明情報が用意されている場合は、登記原因として、保証委託契約に基づく求償債権か、保証委託契約による求償債権と明確に記載されているため、文言通り申請すればよいので気になるところもない。しかし、たとえば、土地先行での決済で、新規抵当権設定の契約証書には、「保証委託契約による」と記載されているものの、建物ができあがった時の追加設定契約書には「保証委託契約に基づく」と記載されており、建物新築の際の追加の抵当権設定登記申請について、はたして、どちらの登記原因によって登記申請をするか迷ったという、割とどうでも良い悩みです笑。金融機関の法務部?契約書を作成する担当者はそこまで気にしていないので、表現がバラバラになるのかなぁと。勿論、意味合いは同じなのでどちらでも良い話ではあるのですが司法書士としては気になるところ。
勤務時代には、各金融機関の設定契約書がバラバラであるため、この登記原因は記載されている通り、登記申請しなさいと教わりました。そこで、このように新規と追加で統一性がない金融機関の場合に、どのように処理するか少し悩んだのですが、登記研究770平成24年4月の質疑応答で再掲載されていたのが(元は登記研究345号79項)、住宅ローンの保証委託契約に基づく求償債権担保のための抵当権設定登記申請にあたっての原因の記載は「年月日保証委託契約による求償債権の年月日設定」とするのが相当である。との記載があって、恐らく、登記申請でも、「基づく」「による」には違いがない様子。勿論、前登記に登記原因の文言を合わせて登記申請を致しましたが、事前に納得ができる解答があったので不安を取り除くことが出来た次第です。ちなみに、たまにあるのが、求償債権だけではなく、それに基づく一切の債権を担保する場合は、「年月日保証委託契約年月日設定」となるので、債権の範囲が異なり注意を要する。
遺産分割調停に基づく相続登記で、調停調書の記載内容によっては相続関係の戸籍が不要であったり、被相続人の住民票の除票が不要であったりは、書籍の通りなのですが、今回、主文を確認してみると、どうも、数次相続が発生しているものの、その件については主文で一切触れておらず、しかし、別紙の相続関係図を確認すると数次相続が発生した際の全ての相続人が記載されているという、数次相続が加味されての調停とも、数次相続がスルーされている調停とも読み取れる調停調書を弁護士から預かりました。相続放棄がされている場合は、そもそも相続人では無いので、主文で記載されない場合もあるのですが、知り合いの弁護士では無いので、念のためお電話で数次相続について確認すると、「確かに数次相続が発生していますね」と、今気づいたご様子。家庭裁判所には職権探知主義が採用されているので、裁判所側で把握している可能性もあるが、申立代理人としては数次相続の旨は調査していない状態で調停が進行しているとの事。もし、この調書に基づいて登記ができる可能性があるとすれば、調停調書に記載されている相続関係図の通りの相続人だけである必要があるが、(相続人に漏れがあると調停が無効となるため)数次相続が発生した際の相続人が調停に参加していない場合では使えない。
後日、弁護士からは、数次相続の相続人は、異母兄弟の相続人で、数次相続発生時に既に相続放棄をしていたとの回答があったので、相続人が全員参加としては問題なさそうだが、法務局へ相談をしたところ、登記は可能であるが数次相続の相続関係が分かる戸籍一式を添付することとなった。
法務局は形式的審査権しかなく、調停調書が出されている以上は、それに基づいて相続登記の申請をされると、実質的なところは審査できず、このような対応になったのかと考えます。司法書士として相続の登記申請を受任するので、仮に法務局で戸籍一式不要となった場合でも、相続関係の確認は必要であると感じました。本当は調停のやり直しが正式な方法だと思いますが、今回の様に相続関係が変わらないのであれば、同じ調停を再度申立する実益も無いように思います(調停の変更決定が出るのか調べていないので不明。なお、今回は調停に代わる審判だったので既に確定しており変更決定は難しいように考える)。
専門家に遺言書の作成の依頼をすると、遺言書の作成については公正証書をお薦めする事が多く、問題が生じないのだが、法的知識のない方が自筆証書遺言を作成した場合、文言について疑義が生じる場合がある。まず、様式として封筒に入っていて封印されているのが原則的な取扱いではあるものの、封印がされていない場合や、封筒に入ってない遺言書もよく見かけます。しかし、これについては効力に影響がなく、自筆である事、遺言書作成日が明確である事、遺言者の署名捺印があれば問題がないことが多い。
今回、気になったのは、遺言書とのタイトルがなく、遺言者の死亡時ではなく「万が一があった場合」との表現で、しかも、「相続させる」と記載されるべきところに「○○へ譲る」となっていた。これについて、せめて「遺言者の財産を○○へ相続させる」という表現であれば、遺言書であると明確であるが、万が一とは死亡時を指すのか否か、譲るとは相続を指す言葉であるのか、との疑問が生じた。
登記研究829によると、特定の財産を「○○のものとする」、「○○が取得するものとする」など、特定遺贈なのか相続分の指定なのか、遺産分割方法の指定なのか判然としない場合は、「受取人が相続人であって相続することが出来る地位であれば、遺贈であると解する特段の事情の無い限り、原則として遺産分割の方法の指定と解するのが相当である。(つまり相続)」また、「○○に渡す」は遺贈。「○○に与える」は遺贈が相当であるが、「譲る」は特に記載が無いので、最高裁判例に従い全文を考慮すれば「相続」で良いのではという結論に至った。現在、相続人が取得する場合、登記原因が相続であっても、遺贈であっても、手続き的には取得する相続人からの単独申請となるため問題が無いのだが。
念のため、この遺言書が遺言ではないとの判断がされると困るので、法務局へ相談をすると、法務局としては自筆証書遺言に検認手続きがされていれば、法務局では遺言書として効力が生じるとか生じないとかの判断は出来ないので、登記原因が「相続」でも「遺贈」でも受理されますとの回答。なるほど、相談をしたコチラが悪かったと謝りたくなる回答でした。形式的審査権しかないので、このような判断になるのかと感じた。
相続登記において、登記名義人たる被相続人の住所の沿革が付かない事は良くあることで、住民票の除票、戸籍の除附票が出ない場合の対応として、被相続人が当該不動産を取得した際の登記済権利証を添付すると、上申書を付けづに相続登記申請が可能である。
権利証が無い場合の対応として、所有者であることの疎明資料が必要になるが、固定資産税納税通知書(最新年度分)+上申書で対応する事が一般的である。この時、納税通知書の宛名が被相続人になっている必要はないようで(課税台帳の名義が法定相続人になっている場合でも)、納税通知書の不動産の記載に該当物件が載っていればよく、それによって、市役所から所有者として認められているという考えに方よるそう。また、この時添付する上申書については、今回名義人となる相続人全員からでよく、法定相続人の全員でなくても特に補正の連絡をすることは無いとの事(登記官から大阪法務局本局の運用を口頭で確認)。この上申書を遺産分割協議書へ盛り込めば、法定相続人全員から上申書を頂くことになり、納税通知書を紛失していなければ、殆どの登記は問題なく申請が出来そうであるが、免税点以下の不動産を相続した場合は、要注意。
権利証もなく、固定資産税納税通知書にも物件が載っていない場合は、保証書での運用をしているとのこと。その場合でも、上申書に押印するのは、法定相続人全員ではなく、今回登記名義を取得する相続人全員で問題は無さそうである。
いつからの運用なのか不思議に思っているのだが、少し前は疎明資料をつけなくても相続人全員からの上申書があれば手続きが出来たような記憶だったので、住所の沿革が付かず、権利証が無い場合は、事前相談をする方が無難である(登記連絡会などで明らかになれば良いんですけど)。
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